書道の師範とは?
書道の師範とは資格であり、指導者の免許であり、その流派でのみ通用する身分でもあります。
まず、書道の師範は資格としての側面を持っています。各流派によって認められた資格であり、各種資格のように等級によって定められたランクの中でも最も高い等級の資格にあたるのが師範です。もちろん流派によっては師範以上の資格を設定しているケースもありますが、いずれにしても高いランクに位置する資格であることに変わりはありません。
次に師範はその流派での指導者、先生の免許としての一面も持っています。流派に認められた師範は、後進の指導を行うことができ、各流派の技術や思想を伝える教育者として、書道教室の主宰をすることもあります。また、弟子を取ってプロの書道家を養成する師範がいるのも事実です。
このような側面以外にも、流派における身分を保証するものでもあります。師範であることは、流派の団体の運営に関わる立場に立つこともでき、場合によっては他の書家を師範として認める認定組織での最低限の身分となることも珍しくないのです。ただ、一方で特定の流派の師範として認められ、資格を持っているからと言って公的機関教師のような指導ができるといったことや他団体でも権威としてふるまうといったことが必ずしもできるわけではありません。
このように指導者、資格、その流派での身分の保証といった意味を持つのが書道の師範です。
書道の師範になるには?
書道の師範になるには、免許取得と同様にいずれかの方法をクリアする必要があります。それは、指導を受けること、認定試験を受けること、場合によっては通信教育を受けることでも取得できます。
まず、指導を受けることは、師範になるうえで主に取られる方法です。書道を指導している師範の方の教育を受けて技術や思想を学び、力を付けたのち、昇段試験を受けて徐々に等級を上げていき初めて師範として認められるというものです。場合によっては、書道教室の師範を目指すコースを受講したり、昔の徒弟制度のように弟子入りして徹底的な指導を受けるという形態を取ることもあります。
次に認定試験を受ける方法も師範になる手段として認められているケースが見られます。全国書道教授資格認定試験がそれにあたり、第一種から第三種までを段階的に取得していきます。この認定試験では、第三種に合格すると「師範十位」とよばれる認定が行われて、書道の師範の資格が得られます。
最近では、通信教育でも書道の師範になれるようになりました。流派に所属していない場合は書道師範の資格を取得できますが、なかには流派に所属していないケースもあります。そういったケースに対して利用できるのが通信教育による師範の認定です。通信教育で試験を受けることによって師範を認めている流派もあるので、実際に通信教育を受けて師範になる事例も見られます。ただ、通信教育といっても師範試験を受けられるレベルでないと受講できないため、誰でも気軽に取れるというわけではありません。このように3つの方法によって書道師範になることができます。
書道の師範(認定)試験を受けるまでの流れ
書道の師範には、先ほど触れたように書道の師範の認定試験が設けられています。これは流派によって異なるものの、文部科学大臣が認定する全国書道教師資格認定試験を例に紹介しましょう。
この試験は受験資格がないため初心者でも受験できます。しかし、1次試験から4次試験まで行われており、全ての試験に合格するだけの力を備えておかなくてはいけません。そのためには日ごろから実力を養う必要があるのですが、そのステップとして級位を取る、段位を取る、そして2次試験まで受験し、合格したら古法帖に関する教育を受けて3次試験を受けるという流れになります。等級の取得までの試験は、半紙作品を仕上げることです。等級が上がるごとに字が難しくなったり、表現が難しくなります。そこから段位に上がっていきますが、こちらも基本は半紙に作品を仕上げて認定をもらうという形になります。ここで段を得られて実力を養ったタイミングで先ほどの試験に挑戦しましょう。そして2次試験まで合格したら、次は3次試験にむけて勉強をするのですが、それが古法帖に関する教育になります。この教育を受けないと、そもそも3次試験以降の受験ができません。古法帖について十分学び、知識や思想を養ったことで3次試験が受験できるようになります。このように、半紙作品を仕上げて等級や段位を上げていき、十分な実力を養ったら2次試験まで合格し、それ以降はさらに教育を受けて最終試験を目指すというのが文部科学大臣が認定する全国書道教師資格認定試験を受けるまでの流れになります。
それ以外の師範として通信教育によるものがありますが、これは基礎8か月、専門教育1年4か月、合計2年間の教育を受けて受験するものです。教育は基礎として姿勢や基本的な執筆法である双鉤法の習得までを学びます。そして、楷書千字文および唐の四大家である欧陽詢、虞世南、褚遂良、顔真卿と呼ばれる歴史上の書家の作品を学び、それらの作品の書写を行います。このようにして歴史上の作品や作家の作品を研究、学習して最後のカリキュラムを終えてから試験が受けられるようになります。いずれの免許取得の試験も受験するまでに期間や技術の習得が求められるのです。そして免許の試験に合格して初めて、師範として活躍ができるようになります。
書道の流派にはどんな団体があるの?
書道の主な流派として、次の9つがあります。
1・世尊寺流(せそんじりゅう):最も古い流派。平安時代の書家である藤原行成とその子孫によって興された。
2・尊円流(そんえんりゅう):尊円法親王が広めた流派で、武家の公的文書にも使われた。寺子屋で学ばれていた。
3・法性寺流(ほっしょうじりゅう):優雅さと雄大さを兼ね備えた書風が特徴で鎌倉時代に発展した。
4・持明院流(じみょういんりゅう):江戸幕府の公文書の書法に採用された。
5・有栖川流(ありすがわりゅう):現在も皇室に伝わる流派。江戸時代後期に有栖川宮第五代の職仁親旺により創始された。
6・光悦流(こうえつりゅう):装飾性が高い書風で江戸時代初期に活躍した本阿弥光悦が創始した。
7・禅林墨跡(ぜんりんぼくせき):禅宗などで用いられている流派。
8・尊朝流(そんちょうりゅう):2の尊円流の流れを汲む一派で御家流のもとになっている。
9・竹峰流(ちくほうりゅう):1980年代に誕生した現代の流派で、望月秋羅らによって創設された。
ただ、団体については、以上の9つの流派から無数に誕生しており、それがいわゆる流派として今も存在しています。
書道業界で流派よりも主流の会派
日本の書道の流派は主に9つ挙げられますが、実は先ほど触れたように無数の団体が存在し、実質的に流派が消滅したといっても過言ではありません。そのため、書家の所属団体による会派と呼ばれるものが主流になっています。そんな会派の中でも主な会派として次の会派が挙げられます。
1・日本書道教育学会:日本文化の復興をもとに流派にとらわれずに参加できる会派。
2・日本習字教育財団:「正しい美しい愛の習字」を基本理念とし、国際交流にも力を入れている会派。
3・全日本書芸文化院:古典・古筆を重視し、月刊誌の発行や全国の児童が参加する全国書道コンクールを開催している会派。
4・全国書教研連盟:「文字を正しく早く、そして美しく書く書写力を養う」目的としており、小中学校の書道教育にも貢献している会派。
5・全日本書道連盟:書家が集まって設立された団体。流派の垣根を越えて、正しい日本語の在り方を追求することを重視している。
6・日本書作家協会:第一線の書家が多く所属する会派で、子ども習字通信という子ども向けの通信教育にも力を入れている。
7・日展:日本の美術界の一線を走る団体の中にある書道の会派。観る楽しさを重視している。
8・日本書芸院:会員数で日本最大の団体。多くの作家を輩出している。
9・創玄書道会:日本古来より伝わる美しい言葉、詩、俳句、随筆を書道として表現しようという会派。年齢に関係なく多くの会員がいる。
10・日本総合書道院:中国との交流が積極的な会派。書道にとどまらず異文化交流など社会活動にも注力している。
11・中部日本書道会:80年以上の歴史を持つ中部地方の会派。中部地方を中心に指導や展覧会を開催している。
流派自体は、途切れてしまったり、あるいは他の流派と融合してしまったりといった状況ですが、会派は書道の団体として日本でも積極的に活動しているのが日本の書道界の状況です。
